肝臓公司ロゴ

AWORKS/エーワークス(学芸大学)のおしゃれで濃厚なチーズケーキはチーズケーキというジャンルを壊し、新しい視点からチーズケーキを構築しようとしています。

AWORKSの美しいチーズケーキ

多くの人が同じように見ている世界に新たな視点を持ち込み、ジャンルやカテゴリーを揺さぶるものがあります。私たちが当たり前とすら思わずやり過ごしていることに楔(くさび)を打ち、"常識"としていることに疑問を抱かせるのです。

「これって本当にそうなの?」

「当然のように考えてたけど、もしかしたら違っていたかも?」

と。

何の話かって? AWORKSのチーズケーキの話をしています。

aworksの画像

学芸大学駅から徒歩8分。東口商店街を抜け、香氣 四川麺条 学芸大学店のある信号を左折した先、二股に分かれる地点にAWORKS(エーワークス)があります。中央緑地公園の隣の建物の2階です。詳しい道順はまた後ほど。

aworksの画像
古民家カフェ時代の外観

代表は船瀬洋一郎さん。2014年5月、AWORKSは学芸大学駅近くに古民家カフェとしてオープンしました。2018年6月9日にいったん閉店して、約3ヶ月後、上述の地へ移転するとともにリニューアル。

もともとは沖縄で創業し、湘南にもお店を出していました。沖縄・湘南時代の店名はAZZURRO。イタリア語で青の意味。現在も看板は青色で、店名の「A」はもしかしたら、AZZURROから来ているのかもしれません。

そんなお店が流れ着いたのが、ここ学芸大学。

aworksの画像 aworksの画像

旧店舗は木造の古民家カフェでしたが、現在はスタイリッシュなオシャレカフェ。

aworksの画像 aworksの画像 aworksの画像

ショーケース内には一般的なチーズケーキとはまったく様相を異にするオシャレなケーキが並んでいます。奥にチラリと映っているのはAWORKSの知名度をさらに高めたレインボーチーズケーキ。

けど、私が一番惹かれたのは……。

aworksの画像

きれいだなぁ。いや、かっこいい。マーブル状に白と黒が入り混じるバナナ。なんか、この空間をそのままチーズケーキにしたみたいな色あいだ。

フォークはゆっくりと沈んでいきます。重量感のあるチーズケーキをまずはひと口。

滑らかなクリームが舌に触ります。と同時にシャリッ、サクッ。オレオを使ったチーズケーキがあるようだから、これはオレオを砕いてサラサラにして、生地に練り込んでるのかな?と思ったら、黒ごまだそう。

風味で最初に感じるのは香ばしさと塩味。これらが甘味を引き連れて来て、最後にチーズを残していきます。

すべてがよくマッチしているのですが、どちらかというとカウンターをあててバランスを取っている感じ。滑らかさにシャリサク感、塩味に甘味、香ばしさにまったり感。対立するものを置くことで、どちらかを一層引き立てようとしています。

ああ、なんておいしいチーズケー……ん? チーズケーキ?

食べながら考えます。これをチーズケーキと呼んでいいのか? いや、そもそもチーズケーキって何だ?

よくあるチーズケーキと見た目も材料も違います。けど、単に見た目や材料のことを言ってるわけじゃありません。AWORKSのチーズケーキを他と分け隔てているのは……何だろう。何が違う?

レインボーチーズケーキを含め、移転前のチーズケーキは、他にないちょっと変わったチーズケーキでしかなかった(悪い意味ではなく)。チーズケーキの枠に収まっていた。けど、今は違う。目の前で平らげようとされているこの料理、これをケーキという枠に押し込め、チーズケーキという烙印を押していいのだろうか……。

私の中でチーズケーキというジャンルにヒビが入り、チーズケーキの概念がガタガタと音を立てて崩れていきます。けど、なぜだかそれが気持ちいい。

Anton Ego:A little perspective. That's it. I'd like some fresh, clear, well seasoned perspective.

「レミーのおいしいレストラン」で評論家・イーゴは主人公・ネズミのレミーに注文します。「perspectiveをよこせ」と。字幕や吹き替えでは「将来性」と訳されていますが、これは見方・視点(point of view)という意味でしょう。イーゴが欲しているのは料理に対する、あるいは料理に込められたシェフの思想・視点。そして、レミーが作るラタトゥユに、レミーが提示する新たな視点にイーゴはやられ、崩れ落ちます。

私も同じ気分です。AWORKSのチーズケーキに込められた、チーズケーキというジャンルを壊し、新たにチーズケーキを構築しようとする視点に、私は崩れ落ちるのでした。

チーズケーキに限らず、飲食に限らず、私が好きなのはこれ。私が評価するのはこれ。私の中の常識をぐらつかせてくれること・もの。新しい視点。こういう批評性に出会えることこそが喜び。快感。

aworksの画像 aworksの画像 aworksの画像

にしても、おしゃれな空間でかわいい女の子たちが楽しそうにおしゃべりしながらチーズケーキを食べている中、おっさん一人、なにを考えてるんだか。面倒くせぇw

会計を済ませ、カンカンカンと階段を下ります。

あ。

aworksの画像

初めて気づいた。ネズミじゃん。ははは。そうね、AWORKSには確かにネズミがいた。チーズケーキに新たな視点をもたらすネズミが。

最後も「レミーのおいしいレストラン」からの引用で〆ましょう。

Linguini:Can I interest you in a dessert this evening ?
Anton Ego:Don't you always ?
Linguini:Which one would you like ?
Anton Ego:Surprise me !

リングイニ:デザートはいかがですか?
イーゴ:もちろん頂こう。
リングイニ:何にしましょうか?
イーゴ:(レミーに向かって)私を驚かせてくれ!

旧店舗のAWORKSはコージーな古民家カフェ

以下は旧店舗時代に書いたものです。

aworksの画像

店は古いアパートの1階で古民家風。2人掛けテーブルが3つ、6人掛けテーブルが1つ、あと一人用のカウンターっぽい席もあります。

aworksの画像 aworksの画像 aworksの画像

食べ物は日替わりのメニューとレギュラーメニューがあります。レギュラーから特製グリーンカレー、スパイシーチキンライスを選んでみました。そして、片方はドリンクとチーズケーキがつくフルセットに。そう、AWORKSといえば、おいしいご飯はもちろん、チーズケーキが有名です。

aworksの画像

ご飯が出てくるまでの間に、チーズケースを品定め。ケースには10種ほどのチーズケーキが並んでいます。こちらも定番がありつつ、日によって特別なチーズケーキがあるようです。

「どれにする?」

「うーん、ゴルゴンゾーラかピスタチオかな」

「じゃあピスタチオにしようか」

無類のピスタチオ好きなのです。コストコのデカいピスタチオでも二晩で食いきれる自信がありますw

aworksの画像

私たちが入ったのは14時ごろ。ちょうどその時は誰もいませんでしたが、退店するまでの約30分間で、次から次へとお客さんがやって来ました。男性一人、女性一人、カップル、赤ちゃんからおじいちゃんまで勢ぞろいの5人連れ家族。

ランチタイムは11:30~16:00と長いです。ただ、これだけ多く人がやって来るというのは、この時間にやっているのが重宝ってだけではないでしょう。

「こういうコージーなの、女子は絶対好きだよねぇ。会社の近くにあったら週一で来るなぁ」

「コージー?」

スマホで出したオンライン辞書を私に見せます。

cozy
1〈部屋など〉(暖かくて)居心地のよい; こぢんまりした.
2〈人が〉くつろいだ,楽な; 打ち解けた,親しみやすい.

「へぇ。初めて見たよ。コージーコーナーのコージーもそうなのかな」

「それは知らんけど」

帰って調べたら、コージーコーナーのコージーもそうでした。

確かにね。天井からつり下がっているランプシェードも、壁にかかっている絵も、ふすまと思しきものに描かれているイラストも、テーブルも椅子も、なんだかオシャレ。アンティークな雰囲気は落ちつくし、全体的にゆったりしてるし、女子ウケしそうってだけじゃなく、家族連れにもいいだろうなぁ。

さて、料理がやってきました。

aworksの画像 aworksの画像

スパイシーチキンライス。カオマンガイの焼いたバージョンといった感じ。皮がパリッと香ばしくスパイシーです。ライス自体にもほのかに味がついています。

aworksの画像 aworksの画像

特製グリーンカレー(ショウガ、プリックナンプラーつき)。タイ料理屋で出てくるグリーンカレーとはかなり違います。野菜たっぷり、パクチーいっぱい。カレーは甘さ控えめで、野菜のうまみがしっかり出ています。

「おいしいね」

「うん、うまいね」

「カフェメシでこれは相当レベル高いよ」

カフェにもよく行く連れがそう言うんだからそうなのでしょう。ただ、うまいだけじゃありません。特にグリーンカレーに感じるのですが、料理にちゃんと主張がある。こうしよう、こうしたい、というのが料理に表れている。だから食べるのが楽しい。

ご飯を食べ終えると、ピスタチオのチーズケーキとアイスコーヒーがやってきました。

aworksの画像

コーヒーもシャレた出し方すんなぁ。半分ほどを水が入っていたグラスに注ぎ、ミルク全部とシロップたっぷりを入れます。私は甘いのが大好きなのです。

では、名物のチーズケーキを頂いてみましょう。

aworksの画像

チーズケーキの堅さはしっかりめ。フォークはゆっくりと滑らかにチーズケーキのボディに沈んで行きます。ひと口。チーズ感がちゃんとありつつ、ピスタチオの風味も強い。そして、ねっとりと口内に絡みついてきます。濃厚。

「うまっ」

「おいしいね」

なるほど、このチーズケーキにしたってそうだ。めっちゃおいしいんだけど、それだけじゃない。だって、Instagramとかtwitterとかで、このチーズケーキが写ってたら、それだけで「ああ、AWORKSだ」とわかるじゃないですか。

見ただけで、それがどこの料理かわかる。そういう料理を出す店ってのは、大概いい店なんですよ。VOVOのカレー、さいとう屋の卵焼き、アオギリの鳥唐、トクスエのトマト。レモンが写ってりゃばんなわけでして。どれもこれも見ればわかる。そしてどこもいい店です。

なぜそうなるかというと、店にしっかりと主張があるから。店が何かを伝えようとしているから、こちらにも伝わって来る。そして、その伝えたいと思っていることこそが、おいしさへとつながります。

aworksの画像

このチーズケーキは見た目、食感、味わいが濃いだけじゃない。ここに詰まっている作り手の想いも濃厚で、このうまさは記憶に濃く残ります。

なんだ。オシャレで若者に人気のカフェかと思いきや、うまくてすごい店なんじゃん。ふむ、ええ仕事してはりまんなぁ。とオッサンはダジャレで締めw

AWORKS(新店舗)への行き方

aworksの画像

東横線・学芸大学駅の改札を背に右手、東口商店街をずっと真っ直ぐ行きます。

aworksの画像

商店街を抜けるとバス通り(都道420号)とぶつかる5叉路。香氣 四川麺条 学芸大学店のある交差点です。ここを左折。パン屋・麦ばたけのある方向です。

aworksの画像

ひとつ目の十字路。これを右に折れるのが油面通り。タケノとおはぎダンラポッシュへ行く際もここを曲がります。ですが、ここもまだ真っ直ぐ。

aworksの画像

道がふたつに分かれます。左ルートは駒沢通り・祐天寺二丁目交差点(スーパー三和のある交差点)につながります。

右手に伸びるのは中町通りなんですが、この右手を見やるとすぐそこ。

aworksの画像

中央緑地公園の手前にこんな建物があります。

aworksの画像

階段を上った2階がAWORKSです。

aworksの画像

青い看板が出ているので、近くまで行けばすぐわかると思います。

A WORKS 新しいチーズケーキの教科書(著:船瀬洋一郎)

SHOP DATA

学芸大学の全飲食店リストバナー