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Abura Bar/アブラバー(祐天寺)の功罪~明るくてかわいい店主と柔らかな常連たちが作り上げる空間は居心地よく、他をめぐる気が失せるほどでした。

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祐天寺駅から徒歩1分。ロータリーとは反対側、西口の路地を線路に沿うように五本木・学芸大学駅方面へ向かうと、坂になっています。その坂を下り始めるあたりにAbura Bar(アブラバー)というカジュアルなバーがあります。忠弥の手前です。2014年12月3日にオープンしました。

※追記:2021年4月20日、沖縄県にAburaBar Okinawaもオープン(沖縄県那覇市牧志2-1-16)。追記以上

店の前に着いたのは木曜日の22時ごろ。ところが、店は真っ暗で閉まっていました。あらら残念。定休日なのかまだ開店時間じゃないのか……。店のちょいと先でスマホを出して調べていたら、背後でカシャンと音がしました。振り返るとAbura Barの入口に人影。お、店の人かな。

「開きます?」

「すみません。お待たせしました? どうぞ」

後ほど改めて調べてわかったのですが、定休日ではなく、通常であればおそらく開いている時間。たぶん、その日がたまたま遅かったんですね。店内と看板に明かりがつくのを待ち、店に入りました。

「どうぞお好きなところへ……あ、もしかして肝臓さんですか?」

「はい(笑)」

「来て頂けたんですね! 嬉しいなぁ」

「ははは。いやぁ、よかったです。開いてくれて」

明るくてかわいいこの子は店主のみさちゃん。私のブログをよく読んで頂いていて、共通の知人(学芸大学のBAR YONAKIの奥山君とか)がいたりもして、私のことをご存じでした。

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カウンター10席ほどで小さなソファーが2つ、2人掛けテーブルがひとつ。ギュッと詰めれば何気にたくさん入れそうな広さです。オレンジ色の照明でなんだかとても落ちつきます。

こういう雰囲気のバーには珍しく(?)、ちゃんとしたドリンクメニューがあります。広げて見てみると、メニューがみっちり。だいたい700円ほどです。チャージは300円。

一杯目はハイボール。私の直後にやってきた常連さんも交え、いろいろ話をしました。

「こちらはどれくらいになるんですか?」

「2年4ヶ月です。中目黒にさかとこというお店があって、そんなお店を作りたいなと思って始めたんです」

「飲食店は3年続けば5年続く、5年続けば10年続くって言われますよ」

「そこまでは(笑) 誰かに任せて、私はカウンターで飲んでいたいです(笑)」

「何時までやってるんですか?」

「朝5時までです」

「学大もそうなんですが、祐天寺も遅いんですかね」

「そうですねー。ここも12時過ぎる頃から混みはじめます」

「(祐天寺駅の)こっちとあっちじゃ雰囲気がぜんぜん違うし、こっちのほうに住んでないと、ここはなかなか通らないんですよねぇ」(常連さん)

「学芸大学も西口と東口では雰囲気が違うし、バーとかも客層が違いますねぇ。学芸大学で飲んでると祐天寺の人もよくいるんですが、祐天寺に学芸大学から来てるって人います?」

「いますよ。学芸大学と祐天寺の間くらいに住んでる人も多いので」(常連さん)

「そもそも学芸大学から祐天寺って歩けますしね」

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学芸大学駅、祐天寺駅からの徒歩15分圏。ふたつの円が交わる部分が両駅へ15分以内で行ける地域。両駅を直線で結んだ中間地点は、駒沢通りと東横線が交差するあたり。このラインと直角で交わるラインが両駅へほぼ同じ時間で行ける地点

いま、googleのルート検索で調べてみたら、学芸大学駅からAbura Barまでは徒歩14分でした。五本木交差点からだと10分。私の中では学芸大学と祐天寺ってのは兄弟って感じなんだよなぁ。

「学芸大学にはよく行くんですか?」

「はい。Peace!!(ピース)とかregina (レジーナ)とか」

そもそもなぜAbura Barに来ようと思ったかというと、以前、どこかで誰かが「祐天寺のAbura Barがいい」と教えてくれたから。誰だったか忘れていたのですが、今のひと言でピンときました。

「○○ちゃんって知ってます? 確か○○ちゃんがここがいいって教えてくれたと思ったんですが」

「ちょっとわからないですねぇ」

その場で○○ちゃんにLINE。そうしたらやはり、○○ちゃんでした。しかも、このみさちゃんはカラオケがうまいともLINEで言ってます。

「わかりました。やはり○○ちゃんです。たぶん、Peace!!で会ってるんだと思います。そいつもよくPeace!!に行ってたから」

○○ちゃんの写真を見せると、みさちゃんは「あー」と思い出したよう。

「こういう話をしてたら、カラオケ行きたくなっちゃうなぁ(笑) そういえば、Peace!!の板倉さんがたまに来てくれるんですが、以前、ここで寝ちゃって、起きたのが朝9時でした(笑) 飲んで寝ちゃう人っているじゃないですか。寝てる人を起こすの、かわいそうだからイヤなんですよねぇ」

「僕も以前、来て注文して、そのまま寝ちゃって、お金も払わず帰っちゃったことがありました(笑)」(常連さん)

「それだけ安心してくつろげる店ってことなんでしょうね」

「そういうことにしときます(笑) これ、サービスでどうぞ」

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鳥を揚げたものです。写真で撮ろうとしたら、「恥ずかしい! こんなの!」と照れてましたw けど、とてもおいしかったです。ていうか、バックバーに書かれたフードメニューがすごい。ナッツ、チーズ、オリーブから、ソーセージ、ラーメン、おでんまで。

「何気にフードが多いですね」

「はい、何気に(笑) 以前、イタリアンの料理人だったんです」

なるほど。その日は食事をした直後だったので食べられませんでしたが、次来た時は何か食べてみよう。きっとどれもおいしいんだろうなぁ。

おっとっと。そうだ。もう"一人"紹介しておかなきゃ。

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看板猫、スコティッシュフォールドのカツオ君。本当は真っ白なんですが、私のスマホカメラが性能悪くて。最初はちょいと警戒されたのですが、すぐになれてくれました。かわいいね。あ、上の学大と祐天寺のツイート、祐天寺をカツオに例えてるやw ははは、こりゃまた偶然w

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さて、2杯目はどうしようか。バックバーを見渡します。

「あっちの棚にもありますし、冷蔵庫にも冷えてるので、言ってもらえたらいろいろ出します」

お酒が結構揃っていて、並んでいるボトルを眺めているだけで楽しい。ウィスキー系が多くてリキュールもたくさんあるなぁ。女性客が多いというのと、お客さん自体も多いってことなんだろうな。じゃないとリキュールって置きづらいんですよねぇ。

「ラムは何がありますか?」

「ロンサカパ、キャプテンモルガンのプライベートストック、ハバナクラブ7年、マイヤーズ……」

「じゃあロンサカパをロックで」

「ロンサカパっておいしいですよねぇ」

「おいしいですねぇ」

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ロン サカパ センテナリオ。Ronはスペイン語でラム。Zacapaはグアテマラのサカパ市。Centenarioは100周年(100歳)。1976年に創立100年を迎えたサカパ市がこれを記念して創ったラムです。ボトルに巻かれた椰子の葉で編まれたペタテは、ひとつひとつが手作り(以前はボトル全部をこれが包んでいました)。芳醇で甘くて濃厚で、ディプロマティコやパンペロと並んで大好きなダークラムの内のひとつ。

音楽や海外ドラマの話で盛り上がっているみなさんの会話をBGMに、のんびりとラムを飲みます。

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別日に飲んだ「REDRUM」。ちょっと珍しいお酒があるのも魅力

それにしても、なんで"ABURA"なんだろうな。油を売るようにゆっくりしていくという意味なのか、潤滑油的な存在という意味なのか。聞こうと思えば聞けるんだけど、やめておこう。なんでも聞きゃいいってわけでもない。いろいろ想像するのもまた一興。もし知りたきゃ次来た時に聞けばいいし。ていうか、絶対また来ることになるだろうし。

※追記:再訪して聞いたら判明しました。あえてここに書きません。気になる方は聞いてみて下さいw 追記以上

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常連ばかりで、一見が入りづらい(いづらい)。

そういうセリフをよく耳にします。常連ばかりということ自体は決して悪いことではありません。むしろ、それだけ支持されているわけですから、いい店である証拠。

ただし、中には常連だけが結託し、また、店主も常連にしか目がいかず、一見をおろそかにする、一見が疎外感を感じるという店もあります。これはいけません。常連であればあるほど、店、他の客、特に一見に気を遣うべきでしょう。

店(店主の人柄)が客層を決めます。そして、客は店の雰囲気を形作ります。店と客はお互い手を取り、店を作り上げていくのです。店と客が、客と客が良好な関係性を築いて、すばらしい空間を作っているなぁ。一見にも優しいなぁ。そう感じられる店に出会えると、本当に気持ちがいい。

まさに、ここAbura Barがそうでした。ポジティブでパワフルで、明るくて元気で、かわいい店主・みさちゃん。彼女の才能なんでしょうね。人がおのずと集まって来る。彼女がこんな感じだから、集まる客も彼女を支えようとし、この店を盛り上げようとする。そして相乗効果で素敵な店ができあがる。そんな店は一見にもとても優しかった。

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祐天寺のバーはほとんど行ったことがありません。ほぼ初めてのバーがAbura Barです。しょっぱなにこんないいバーに出会えたのは功。ただ、もう他をめぐる必要がないとすら思わせるのは罪と言えば罪。

祐天寺駅界隈にお住まいの方はもちろん、学芸大学駅方面に住んでいる方でも徒歩で十分行ける距離です。一度、Abura Barに行ってみてはいかがでしょうか。カジュアルで優しくて、バーに不慣れでもきっと楽しめると思いますよ。

ただし、もし祐天寺にそれほど詳しくないなら覚悟をして行って下さい。最初に最高を知ってしまうのもよかれあしかれw

SHOP DATA

蛇足:もうひとつの「ABURA BAR」あるいは曽根さんとの思い出

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画像転載元:DJ SONE (ex 玉椿)/ SONE BAR 7th ANIV MIX

今から15年ほど前の話。

渋谷のあるバーに行ってたら、そこが潰れてロビンズネストというバーになって、そこにも通っていたら、マスターの青木さんにSONE BARを紹介され、SONE BARにも頻繁に行くようになりました。

渋谷・神山町にあるSONE BARは曽根さんという方がやっていました。とにかく優しくて、いっつもニコニコしてて、毎晩のようにヘベレケで、本当に素敵な方でした。そんな曽根さんに連れられて、2、3度、代々木上原にあったバー・ABURA BARへ行きました。朝までやってる面白いバーで、グデングデンになった曽根さんとハチャメチャに飲んでは大騒ぎ。不思議な魅力を持つマスターも印象的でした。

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曽根さんの家にて。中央奥、口を開けてこっちを見てるのが筆者w 2002年10月20日撮影

けど、玉椿(ツバキハウスの姉妹店)の伝説的DJだった曽根さんは6年前に亡くなって、私はもうSONE BARには行っていません。ABURA BARはもうありません(下の姉妹店・coffee prahaと合体して、喫茶バー ナイマ(naima)となりました)。その頃の記憶は薄れてきています。

何の因果か、隣町・祐天寺にもAbura Bar。私の中のアブラの記憶はここでスイッチ。新たなアブラの思い出がここで積み上げられていくといいなぁ。そんな風にも思わせてくれるバーでした。

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