「胃酒屋 かず」(中目黒)はとてつもない量のお通しが出てくる、優しいマスターに癒されるほっこり居酒屋です~中目黒で一番好きな居酒屋と10年ぶりのランデブー

中目黒駅から徒歩3分。目黒銀座商店街の入口から少し行ったところ、「鳥よし」の手前に「胃酒屋 かず」という居酒屋があります。「ばん」「セブンイレブン」と同じ筋の駒沢通り方面です。


オープンしたのは2004年ごろ。もともと八百屋をやっていたというマスターが一人でやってらっしゃいます。

店内にはカウンター6席ほどと4人掛けテーブルが2つ。そして、タヌキの暖簾の先が居間なのですが、大人数だとこちらも利用できます(要予約かな)。トイレは居間を通っても行けるのですが、普段は一度外へ出て、建物のすぐ脇の筋を入ってトイレに向かいます。

なぜこれほど詳しいかと言うと、10年ほど前、まだ中目黒界隈に住んでいた頃、とにかくよく通っていたからです。近所の友達はみんな連れて行ったし、居間で宴会みたいなのもやったり。ここがまた居心地がいいんだわ。

いつからか足が遠のいてしまい、学芸大学に引っ越したということもあって、まったく行ってませんでした。しかし、先日、中目黒へ行くことがあり、久しぶりに寄ってみたという次第です。近い内に絶対、と思いつつもう数年。ようやく。

「胃酒屋 かず」にはひとつの”ルール”があります。まずはドリンクを注文するわけですが、食べ物の注文はまだしちゃいけません。なぜなら、とてつもない量のお通しが出てくるからです。

うはは。来た来た。ポテトサラダ、カボチャ、きんぴら、白身魚の甘酢餡かけ。けどね。

もやしのナムルもやってきました。まだ終わりません。

冷やしトマトもやってきました。以上がワンセット(お通し代:1000円)。もちろん内容は日によって異なります。

どれもこれもおいしいです。素朴で家庭的な味わい。マスターが作るんだけど、”お袋の味”。特にポテサラは絶品です。通うようになれば、「マスター、唐揚げ食べたいから、お通し調整して」などと言えるようになるのですが、最初はガッツリ、あのお通しを食らって下さいw

10年前に撮影した「胃酒屋 かず」の外観

「10年ほど前ですかねぇ。ここによく寄らせて頂いていたんですよ。奥でよく宴会もさせて頂いて」

「そうでしたか。どちらにお住まいですか?」

「当時はすぐ近くだったんですが、今は学芸大学です。学芸大学も近いんですけどね」

「この辺りも随分、新しいお店が増えました」

「ですねぇ。そうだ。隣に『FRASCA(フラスカ)』ってあったじゃないですか。学芸大学に移転してきましたよ」

「あの交差点(※五本木交差点のこと)を曲がったところですよね」

「ですです」

「建物が取り壊されるってんで、移転したみたいですね。こっちは会社が多いでしょう。だから人も多いんですが、あっちは会社ってないだろうから、どうなのかな」

「ああ、やっぱり会社の存在って大きいんですね」

「そりゃあ大きいよ。昼時なんて人で溢れ返るから。以前、昼、ここを貸してたの。やりたいって人がいて。だけど、あまりに忙しすぎて、一人じゃ無理だってすぐやめちゃった」

「へぇ。そんなにですか。すご。やっぱ人口が違うよなぁ。中目と学大では。けど、あっち(五本木)も入ってる時は賑わってるみたいですよ。近所の方たちが家族で来てたりしてますね」

「そうですか。それはよかった」

マスターと話している内に、当時の記憶が戻って来ます。そうそう。マスターのこの感じ。優しくて、何気に話好きで、素敵な方なんだよなぁ。

「もう15年くらいになりますか?」

「今年で12年です」

「すっかり白髪におなりですね(笑)」

「私ももう70ですから」

「えー。若いですね」

中目黒GTができたのは15年前、2002年。その頃には目黒川沿いのほうの再開発も徐々に始まり、「(旧)ばん」が閉店したのは2004年、中目黒アトラスタワーができたのは2009年。

中目黒という街がどんどん変わっていくさまを目の当たりにしていました。そして「ばん」がなくなり、いよいよ行き場を失い、どこかないかとさまよい続け、ここ「胃酒屋 かず」をたまたま見つけ、通うようになったのです。

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そんな経緯があるため、来ることがなくなったとはいえ、私にとって「胃酒屋 かず」は特別な場所です。そして、久しぶりにこうしてマスターと話をして、やっぱりいいなぁと。時間が経ち、マスターは白髪になって、私のヒゲも真っ白になったけど、毛色以外は何も変わらない。

「当時はよく焼豚(チャーシュー)を頼んでたんです。あれ、ほんとおいしいんですよねぇ。ありますか?」

「ないんです。今はたまに作るくらい。お客さんに頼まれて作ったり、宴会の時、『作っといて』と言われて作ったり。もしかして、ネットにチャーシューの写真を上げてる方ですか?」

「あ。もしかしたら、そうかもしれません(笑)」

「そうですか。ありがとうございます」

昔のブログに「胃酒屋 かず」のことを書いてたんです。今はもうありませんが。当時の記事(2007年1月12日付)がこちら。

で、焼豚の写真のアップがこちら。

超巨大なチャーシュー。これがめっちゃうまい。もし、行く機会がありましたら、ダメ元で聞いてみて下さい。チャーシューがあるかどうかを。もしあったらラッキーです。絶対頼んで下さい。

ふむ。私のことは忘れてたかもしれないけど、この写真は覚えてたのか。変なところでつながりがあったんだなw


「メニューにはない今日のおすすめみたいなものってあります?」

「今日は何も……。第三土曜日で本当は休みだったから。この前、連休で休んだから今日は特別に開けてて。ウチ、常連さんばかりでしょう。飛び込みで来る人なんてほとんどいないし」

本来は休みだったのに、たまたま開いていて来れた。こういう運だけはあるんだよなぁ俺w

「もしご飯がほしかったら言って」

うは。まだ終わってなかったのか。いや、さっきチャーシューを頼みたそうにしたから出してくれたのかな。スパイスがきいてて、ひき肉と玉ねぎの甘みが出てる、ほっこりカレー。うまいなぁ。

「おいしいです」

「ご飯いる?」

「いえ、大丈夫です」

普通でしょ? お通しシステムはちょっと変わってるけど、何か特別なものがあるわけじゃない。メニューも決して多くない。でも、それでいいんです。それがいい。だって、私がここで望むのは、マスターとのとりとめのない会話であり、心安らぐひと時なのですから。

そういう意味では、なるほどそうか。私にとっては何か特別なものがここにはあるんだな。けど、他の人にとってはどうかわからない、ということか。まあ、どの店だってそうなんだけど。

「わざわざ来てくれてありがとうございます」

「とんでもないです。また中目黒に来たら寄らせてもらいますね」

マスターはそんなこと思ってないですから私の勝手なんですが、10年ぶり、20年ぶりに学生時代の友達に会った気分。間は開いていても、会うと一瞬で時間の距離はなくなり、当時のままでお互いに言い合える。そんな感じ。次いつ来ることになるかはわからない。けど、いつでも来れて、いつでも安らげる、そんな場所があるってのは幸せだなぁ。

もし通えるような店を探しているというのであれば、一度、ちょっくら寄ってみて下さい。合う合わないってのはあるので、すべての人にとっていい店かどうかはわかりません(どこもそうではあるのですが)。こここそ、マスターの人柄やお店の雰囲気に惹かれて行くような店ですから。でも、中目黒にこういう雰囲気の居酒屋はそう多くありません。のんびり、ほっこりしたいという方にはいいと思います。

あれから10年か。久々だったけど、やっぱり私はこう言えます。

「胃酒屋 かず」が中目黒で一番好きな居酒屋です。

長らく消えていた「胃酒屋 かず」の記事をこうして再び書くことができて嬉しいな。

胃酒屋 かず
東京都目黒区上目黒2-12-3
03-3712-6224
食べログ

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後藤ひろし(ひろぽん)

雑誌・書籍編集兼ライター、ウェブディレクター。主に学芸大学駅(学大)界隈で飲んでます。学芸大学で巡った飲食店の数は約350軒。

https://twitter.com/gokky_510

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