大山鶏、大山どり、大山地鶏、大山地どりは全部違うというややこしさ!誤解・虚偽だらけの大山(地)鶏について、ブロイラー、銘柄鶏、地鶏の違いと共に具体例を交えまとめてみました(読むの疲れます!w)

鳥取県のマスコットキャラクター・トリピーの特別バージョン・にわトリピー

大山鶏、大山どり、大山地鶏、大山地どり、大山軍鶏、大山シャモ。これらはすべて違うものです。よくありがちだと思われる誤解は次のようなパターンです。

「地鶏ってなんかすごい!」
 ↓
(大山地鶏という言葉はどこかで聞いたことある)
 ↓
「ここの焼き鳥、大山どりなんだ! すごーい!」

あ、いや……。

消費者のみならず、販売者・飲食店ですら誤解していることが多いです。場合によっては地鶏ではないのに地鶏と故意に虚偽を謳っていることもありそうです。

これから”大山鶏”について説明していきますが、どの鶏でも同じことが言える内容となっています。長いですが、もしよければどうぞ。

というわけで、まずは基礎知識から。

※大山は「だいせん」と読みます。鳥取県に大山という標高1,729mの成層火山があります。これを含む大山町という町もあります。ただ、ここで話題となる”大山”は正確に大山町に一致するわけではなく、山の大山を中心とした周辺地域(ここでは便宜的に大山地方と呼びます)を指すものと思われます。

食用鶏肉の基礎知識

ブロイラー

明確な定義はありません。短い期間で出荷できるように改良された肉用若鶏の総称です。成長速度が早く、飼料効率にもすぐれたブロイラーは、通常ふ化して50~56日で出荷されます。

参考/農林水産省:特集1 ヨリドリミドリ(2)

銘柄鶏

一般社団法人日本食鳥協会が定義している分類名です。

我が国で飼育し、地鶏に比べ増体に優れた肉用種といわれるもので、通常の飼育方法(飼料内容、出荷日令等)と異なり工夫を加えたもの

出典/一般社団法人日本食鳥協会公式サイト

としています。

羽の色により「白系」「赤系」と呼び分けられることもあります。正確に言うと、赤系は赤ではなく茶褐色です。「赤どり」などと表記されていることもしばしばです。

上記の通り、定義といっても曖昧で、具体的な基準があるわけではありません。日本食鳥協会および各企業が「通常のブロイラーよりこだわって作っている」という姿勢を見せ、消費者にアピールしているというのが実態です。クオリティだけでなくトレーサビリティーなども考慮し、「より安全でおいしいものを」と企業が努力して生産しているのが銘柄鶏、とも言えるでしょう。

地鶏

これだけは明確に日本農林規格 (JAS) で規定されています。

  • ひな鶏:在来種由来血液百分率が50%以上のものであって、出生の証明(在来種からの系譜、在来種由来血液百分率及びふ化日の証明をいう。)ができるもの
  • 飼育期間:ふ化日から75日間以上
  • 飼育方法:28日齢以降、平飼い(鶏が鶏舎や屋外を自由に運動できる環境)で飼育
  • 飼育密度:28日齢以降、1㎡当たり10羽以下で飼育

以上の要件を満たした鶏が地鶏です。

※JAS自体は強制的なものではありません

※在来種、在来種由来血液百分率については後述

参考・出典元/地鶏肉の日本農林規格(最終改正 平成27年8月21日農林水産省告示第2009号)

原産地表示

農林水産省は「生鮮食品品質表示基準」というものを告示しています。これによると、畜産物=鶏肉に関しては、販売者(≒飲食店以外)は国産品か輸入品かを表示しなければいけません。また、国産品においては、都道府県名や地方名などを記載することもできます。

これを偽装した場合は、刑法の詐欺罪、農林物資の規格化等に関する法律(JAS法)違反、不正競争防止法違反、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)違反とされる可能性もあります。

飲食店においては、これらを表示する義務はありません。ただ、農林水産省は「外食の原産地表示ガイドライン」というものを設けています。強制力はないものの、「外食の信頼性を高めるために積極的に取り組む」ことを期待しています。そして、「事実と異なる表示により消費者が実際のものよりも著しく優良であると誤認する場合には、「不当景品類及び不当表示防止法」による措置の対象となります。」とも言っています。

実際、飲食店としては船場吉兆(2007年)、木曽路(2014年)などが産地偽装をして社会的に問題となりました。また、2016年2月には、まさにこの”大山鶏”が問題となりました。京都市の食肉加工会社・都ジャパンが宮崎県産や鹿児島県産のブロイラーなどを「大山都どり」として小売店などに出荷。不正競争防止法違反の疑いで京都府警の捜査が入りました。

参考/産経新聞:宮崎・鹿児島産の鶏肉を「大山都どり」と偽り出荷 京都の業者、廃業へ 「注文、何とかまかないたかった」

スーパー、精肉店、焼鳥屋で具体的に見てみよう

ブロイラー

スーパーで100円/100g(鶏もも肉)くらいで売られている鶏肉はほぼ100%がブロイラーです。基本的には「若どり/若鶏」と表示されていることが多いです。

※「若どり/若鶏」と表示されていれば、すべてがブロイラーというわけではありません

銘柄鶏

最近のスーパーではブロイラーよりちょっと高い、150円~250円/100g(鶏もも肉)くらいで売られている鶏肉もよく見かけます。それぞれに「○○鶏」といった名称がついていたりもするのですが、これが銘柄鶏と言われるものです。


みつせ鶏、肥前ひなた鶏はいずれも(株)ヨコオ(佐賀県)の銘柄鶏です。

「肉の丸徳 学大市場店」が扱っているのは山梨県・甲斐食産(株)の銘柄鶏・信玄どり。

小売店だけではありません。最近は焼鳥屋でも銘柄を表記している例を多く目にします。

学芸大学のおいしい焼き鳥屋さん「炭火串焼き 中村屋」。メニューには「霧島鶏使用」と書かれています。霧島鳥は(株)エビス商事(宮崎県)の銘柄鶏です。

頭がおかしいんじゃないかと思うくらいうまい学芸大学の和食屋「トクスエ」。メニューには「あべどり」と書かれています。おそらく、(株)阿部繁孝商店(岩手県)の銘柄鶏・あべどりでしょう。これもちょくちょく見かけます。

地鶏

スーパーでもたまに売られているのを見かけますが、ブロイラー、銘柄鶏よりも高いです。こちらは徳島県の地鶏・阿波尾鶏。100g換算で300円。

もちろん、飲食店でも地鶏を出す店はありますが、都内の焼き鳥屋・居酒屋等ではなかなかお目にかかることはありません。筆者が住んでいる学芸大学駅界隈で地鶏が食べられるお店は片手で数えられるほどです(媛っこ地鶏、じとっこ/みやざき地頭鶏、天草大王、あと何だろな)。

【宮崎地鶏】★幻の地鶏★『地頭鶏地鶏』ももむね炭火焼 [100g×5]宮崎地鶏炭火焼「車」

地鶏の中でも誤解(?)が多い大山の鶏

では、鶏の中でも特に誤解が多い大山の(地)鶏に関してです。誤解とは言っても、非常に紛らわしいんですけどね(メチャクチャ複雑!)。あるいは、それに乗じて半ば故意に「地鶏」と虚偽表記していると思しき例も多いように見えますが。

大山鶏

特に定義はありませんが、一般常識的に、鳥取県の大山地方で飼育・生産された鶏だと考えるのが妥当でしょう。そして、大山地方以外の鶏を大山鶏として販売し、あるいは飲食店で提供すれば、上述のような法律違反にあたる可能性があります。

ただ、仮に大山の鶏であったとしても、大山鶏という言葉自体に明確な定義がありませんから、大山で育てられたブロイラーも、大山で育てられた地鶏もすべて大山鶏と呼ぶことができます(論理的には)。

私たち消費者視点からすれば、もし「大山鶏」という表記に出会ったら、「ん? これはなんだろう。単なる大山のブロイラー? 銘柄鶏?(だとしたら何?) まさか地鶏? いやいや、地鶏だったら地鶏って書くよなぁ」などと思っていればいいでしょう。

後述しますが、「大山どり」と平仮名になると別物になります。要注意。

大山地鶏

特に定義はありません。ただし、一般常識的に、鳥取県の大山地方で飼育・生産された地鶏だと考えるのが妥当でしょう。そして、販売者や飲食店が大山地鶏と謳いつつ、大山地方以外の鶏、もしくは大山の鶏であっても地鶏ではないものを販売・提供していれば、上述のような法律違反にあたります。

後述しますが、「大山地どり」と平仮名になると別物になります。要注意。

鳥取地どりピヨ

出典/鳥取県:【とっとRichキン】Cheers! OTEMACHI 2017 夏バル×鳥取県 ~鶏のグルメ市~

中小家畜試験場で軍鶏(シャモ)をベースとして開発され、1992年から生産が開始され始めた鳥取県産の地鶏です。鳥取県が商標登録しています(1992年登録)。後述しますが、(株)大山どりの鶏舎でも育てられているので、鳥取地どりピヨは大山地鶏です。

なお、鳥取地どりピヨは鳥取県東部にある鳥取市鹿野町でも育てられています。生産者は(株)ふるさと鹿野。同社が生産する地鶏は鹿野地鶏と言います。

参考/鳥取県:鳥取地どりピヨ

大山地どり(大山シャモ)

大山地鶏、大山軍鶏は単なる一般名詞ですが、大山地どり(大山シャモ)は(株)大山どりによる登録商標です。大山の地鶏ですから、もちろん大山地鶏です。

大山地どりは鳥取地どりピヨがもととなっています。鳥取県からの補助なども受けつつ、(株)大山どりが生産しています。

基本的には大山地どりが商品名として利用されていますが、軍鶏をベースとしているので、大山シャモと呼ぶこともあるのだとか(同社談)。両者は同じものです。

参考資料/鳥取県:県民の声-担当所属別:畜産課

なお、鳥取地どりピヨは(株)大山どりの鶏舎でも育てられていると鳥取県畜産部の担当者はおっしゃっていました。鳥取地どりピヨと大山地どりがどう違うのか、あるいは違わない(ブランド名だけ違う)のかは不明です。

国産 鳥取県産 銘柄鶏 大山しゃも 中抜き 3.5kg〜4kg 業務用 冷蔵品

匠の大山鶏

鳥取県の銘柄鶏です。地鶏ではありません。(株)プレコフーズの登録商標。プレコフーズという大企業が全国の飲食店に販売しているので、特に珍しいものではありません。

こちらは「わたる商店 学芸大学」のメニューです。「匠の大山鶏」と正確に書かれています。

匠の大山鶏もも肉2枚 (1枚約300~350g)

大山どり

鳥取県の銘柄鶏です。地鶏ではありません。大山鶏は単なる一般名詞ですが、大山どりは(株)大山どりによる登録商標です(2004年登録)。こちらもよく見かけます。珍しいものではありません。

学芸大学の「焼き鳥 しま」の入口には「大山どり」と書かれた札が下げられています。

スーパーでも目にします。

蛇崩の鳥肉専門精肉店「鳥昌」。こちらも「大山どり」。上ふたつも含め、すべて同じロゴですよね。(株)大山どりの鶏を扱っているという証拠です。武蔵小山・平和通り商店街、二葉フードセンター「鳥岡(とりおか)」も大山どりだと思われます。

余談ですが、「大山どり」「大山地どり」でよく商標が取れたなぁとw 大山+(地)とり/鶏という単なる一般名詞の組み合わせですから、商標はなかなか下りづらいと思うのですが。

ちょっと小ぶりな丸どり 1羽約1.3〜1.4kg 【大山どり】

大山鶏、大山地鶏のややこしさをまとめてみる

読むの疲れたでしょ?w ここでいったんまとめてみます。

  • 大山鶏、大山地鶏、(大山)軍鶏…一般名詞
  • 大山どり、大山地どり(大山シャモ)…(株)大山どりの登録商標
  • 鳥取地どりピヨ…鳥取県の登録商標

平仮名、カタカナ、漢字が入り乱れ、わけがわかりません。消費者はもちろん、何がどう違うのかわかってない販売者、飲食店もいることでしょう。ですから、本当は大山どりなのにメニューには大山鶏と書かれていたり、本当は匠の大山鶏なのに大山地どりと書かれていたりすることもきっと多いはず。

また、大山軍鶏というメニュー名もよく見るのですが、これが何を指しているのかも曖昧です。(株)大山どりの大山地どりを大山軍鶏と表記しているのか、あるいは鳥取地どりピヨではわかりづらいからと、店が独自に大山軍鶏と書いているのか。

いずれにせよ、一番問題となるのは”地鶏”です。本当は銘柄鶏(もしくはブロイラー)なのに地鶏としてるのは、さすがにいただけません(てか、違法の可能性も)。そして、そうしちゃってる店も相当あると思われます。その店が実際には何を扱っているのかは、もはや個々別々に聞いてみるしかありません(もし気になるのなら)。

怪しい具体例

タイトルには”大山地鶏”。本文には”銘柄鶏「大山鶏」”。どっちやねん! つうか、そもそも「大山鶏」という銘柄鶏ないし。「大山どり」ならあるけど。

おそらくは大山どりのことなのでしょう。タイトルを店がつけたのか、ヒトサラがつけたのか、誰がつけたのかはわかりません。ですが、消費者を誤認させる表記になってはいます。

食べログでの「大山地鶏」の検索結果を見てみました。店が積極的に「大山地鶏」という言葉を使っている例が大量にあります。さて、この内どれだけが本当に大山地鶏なのか……。私は少なくはない虚偽が含まれていると見ています。

大山地鶏の結論

大山地どり、鳥取地どりピヨが大山地鶏。以上w

※もしかするとこれ以外にもあるかもしれませんが、まず一般的には目にすることはないでしょう。生産量が極めて少ないと想像されるので

私たち一般消費者としては、これらの違いを知っておき、店ですらも間違って表記してるかもしれないということを念頭に置いておくといいかもしれません。

販売者、飲食店においては、これらが違うと知っておき、優良誤認させるような表記をしてたら、場合によっては警察沙汰になるかもしれないと認識し、消費者・客のためにも正確に表記することをお勧めします。

あまりにも「大山地鶏」という言葉が適当に、デタラメに使われている事例を目にする機会が多かったので、こんな風にまとめてみました。参考になれば幸いです。

大山地鶏が買える場所

鳥取県内で鳥取地どりピヨ(鹿野地鶏含む)が購入もしくは食べることができる店

鳥取県:ピヨの取扱販売店リスト

都内近郊およびネットで大山地鶏が購入できる店

附録:在来種、在来種由来血液百分率とは

在来種

JASで在来種とされているのは、以下の鶏です。

会津地鶏、伊勢地鶏、岩手地鶏、インギー鶏、烏骨鶏(うこっけい)、鶉矮鶏(うずらちゃぼ)、ウタイチャーン、エーコク、横斑プリマスロック種、沖縄髭地鶏、尾長鶏、河内奴鶏、雁鶏、岐阜地鶏、熊本種、久連子鶏(くれこどり)、黒柏鶏、コーチン、声良鶏(こえよしどり)、薩摩鶏、佐渡髭地鶏、地頭鶏(じどっこ)、芝鶏(しばっとり)、軍鶏(しゃも)、小国鶏(しょうこくけい)、矮鶏(ちゃぼ)、東天紅鶏(とうてんこうどり)、蜀鶏(とうまる)、土佐九斤(とさくきん)、土佐地鶏、対馬地鶏、名古屋種、比内鶏、三河種、蓑曳矮鶏(みのひきちゃぼ)、蓑曳鶏(みのひきどり)、宮地鶏、ロードアイランドレッド

在来種がすべからく地鶏として市場に出回っているわけではありません。

たとえば在来種・比内鶏。私たちがよく見かけるのは比内地鶏です。比内鶏にロードアイランドレッドを交配したものが比内地鶏。一般的に食用として販売されているのは、比内鶏ではなく比内地鶏です。

余談ですが、これまた私たちがよく知る名古屋コーチンですが、正式には名古屋種と呼びます。多くの在来種は他種と交配して地鶏となり市場に出回るわけですが、名古屋コーチンは在来種がそのまま地鶏としても市場に出回っている数少ない例です。

在来種由来血液百分率

在来種由来血液百とは、「在来種を100%、在来種でない品種を0%とし、交配した品種にあっては分率 両親のそれぞれの在来種由来血液百分率の1/2の値を合計した値をいう。」とJASで定義されています。

具体的に、鳥取地どりピヨで見てみましょう。

「ピヨ」は、「シャモ」と「ロードアイランドレット」を交配したものに、「白色プリマスロック」を交配させた、いわゆる「三元交配」により誕生しました。

出典元:鳥取県:鳥取地どりピヨ

軍鶏(シャモ)とロードアイランドレットはJASで在来種とされています。ですから、両者の在来種由来血液百分率は100%です。両者から生まれた交雑の在来種由来血液百分率は100/2+100/2=100%。白色プリマスロックの在来種由来血液百分率は不明ですが、仮に0だとしても、100/2+0=50%。地鶏の要件である50%以上を満たすので、鳥取地どりピヨはJAS的に地鶏となります。

なぜ在来種のままじゃだめなの?

在来種は体・繁殖力が弱かったり、そもそも個体数が少なかったり、あるいは食肉用としてはあまり適していなかったりという場合があります。そこで、病気に強く、早く大きくなり、生産性に優れた、おいしい食肉用鶏へと品種改良されてきました。

そんな背景がありまして、純血のみを地鶏とするのは非現実的、市場の実態にそぐわないということで、農林水産省は上記のように地鶏を定義しています。

最後まで読んだ? マジかw

member_goto02.jpg

後藤ひろし(ひろぽん)

雑誌・書籍編集兼ライター、ウェブディレクター。主に学芸大学駅(学大)界隈で飲んでます。学芸大学で巡ったお店の数は約350軒。

https://twitter.com/gokky_510

記事のシェアはこちらから

こちらの記事もあわせてどうぞ