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居酒屋むらさき(上馬)は、たとえるならぶっきらぼうな”実家の兄貴”~メシも店も人もクセがあったほうがいい

程度の差はありますが、どんな食べ物、食材にも”クセ”があります。この”クセ”をどこまで許容できるかということではあるのですが、私はその範囲が比較的広い方です(別にそうじゃなきゃいかんとは思ってません)。そして、どちらかというと”クセ”のあるものが大好きです。羊、ホルモン・モツ、発酵系食品、アイラモルト、芋焼酎…。

このことは食に限った話ではありません。店も、そして人も、”クセ”のあるほうが大好きです。誰が口にしても「食べやすい!」なんて言われるようなものに興味はありません。誰が行っても安心してくつろげる”いい”店にも行きたいとは思わない。誰にでも優しく接することができて、一切否定的なことを言わない八方美人に辟易します。

さて、今回うかがったのは、国道246号と環七の交差点近くにあるインディーズ居酒屋・むらさきです。間違っても万人が「この店いい!」と言うような店ではありませんw ”クセ”ありまくり。もちろんいい意味で言っています。

ヤンチャそうなお兄さんはぶっきらぼうです。

「なに飲む?」「馬刺しは生姜? ニンニク? ゴマ油?」「かぼちゃ食う?」

人によっては「怖い」と思うかもしれません。だけど、しばらく様子をうかがっていればわかります。「ああ、この人は温かい人だ。真っ直ぐでシャイなんだ」と。あちらはぶっきらぼう。だからこっちもぶっきらぼうになったほうがいい。お互いにぶっきらぼうになれるから、正直になんでも話せるし、時に甘えることもできるのです。

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店内には無数の短冊がかかっていて、赤・青・緑のマジックでメニューが書かれています。とてもいいポップです。「ここは青で書いて、ここは赤で書いて…」そんなことをしているお兄さんを想像するだけでニヤリとしちゃいそうです。

また、こういう店は切り盛りが大変ですから、できるだけメニューを絞りたいところ。なのに異様なまでのメニューの多さ。あれもこれも食べさせたい、そんな店主の心意気が感じとれます。

こういう雰囲気の店、人ですから、料理自体はそれなりだろうと思ったらあに図らんや。食材にはかなりこだわっていて、何気においしい。しかも、多くの料理は注文が入ってから仕込み始めます。時間はかかりますが、とても丁寧な仕事です。豪快さの中にも繊細さがキラリと光っている料理ばかり。

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たとえば、こちらの〆サバ。前日から塩にだけ漬けておきます。そして、注文が入ったら酢にサッと漬ける。出てくるまで15~20分ほどかかりますが、これがもう絶品。刺し身のような生っぽさを残したバツグンの〆サバです。今年食べた〆サバで間違いなく一番おいしかったです。

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むらさきに限らず、こういう居酒屋に遠方からわざわざ行く必要はありませんし、おすすめもしません。近隣のかたが足繁く通いたくなる、フラっと立ち寄りたくなる、そんなお店です。

なんて言うんだろうな。久々に実家に帰ると兄貴がいた。

「おう、久しぶり」

「おう」

「ちょうどメシ作ってたんだよ。食う?」

昔ヤンチャしてた兄貴もすっかり丸くなって。小さい頃に作ってくれていたメシは”ザ・男のメシ”。だけど、それがベラボウにうまくて懐かしくて。兄貴にはなんでも相談してたな。兄貴の出す回答はいつもシンプルで真っ直ぐで…。

そんな感じ。

さて、今晩、もう一度行ってくるか。

「おう、いらっしゃい」

そんな風に迎えてくれることを期待して。

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