多くの人がジェノベーゼを誤解している件~本当のジェノベーゼパスタを作ってみた

本当のジェノベーゼは緑じゃない!

多くの人がジェノベーゼを誤解しています。普通、日本人がジェノベーゼと聞いて思い出すのはこちら。

genovese_06
画像転載元:ニッスイ:えびといんげんのジェノベーゼパスタ

えびやいんげんはさて置き、緑色の”バジルペースト”を使ったパスタをジェノベーゼと呼んでいます。では、「genovese」でGoogle画像検索をしてみましょう。結果はこちら。

genovese_07

緑ではなく茶色です。少なくともバジルな感じではありません。そして、茶色いパスタの画像を載せているのは、多くが「.it」というイタリアドメイン(もしくはイタリアのサイト)。緑色のパスタ画像を載せているサイトは、ほとんどがイタリア以外、もしくは後述する「pesto」が主体のページです。

結論を先に言いますと、本来的にはこういうことです。

Pasta alla genovese=ジェノベーゼパスタ(茶色いパスタ)

Pasta al pesto genovese=ペスト・ジェノベーゼのパスタ(緑のパスタ)

ジェノベーゼがなぜ誤解されるようになったのか

ペストはペーストじゃない

ペスト(pesto)はイタリア・リグーリア地方で生まれた調味料です。ニンニク、松の実、オリーブオイル、バジリコの葉、パルミジャーノなどで作ります。ペスト・ジェノベーゼはジェノヴァ産のバジリコを使ったもので、イタリアの原産地名称保護制度(DOP)に則った呼び方です。

ペスト(pesto)は調味料の名前です。ペースト(paste)は”ペースト状のもの・練り物”という意味。両者はまったく異なる言葉です。また、「ペスト・ジェノベーゼ」という言葉において、本質的なのはどちらかというと「ペスト」です。バジリコを使った調味料がペストなのですから。「ジェノベーゼ」はバジリコの産地を表しているだけ。

※バジリコはイタリア語。バジルと同じです

茶色いジェノベーゼ

後ほど、具体的に作っていきますが、イタリアンのメニューで「牛肉ワイン煮込みソースのパスタ」といったメニューを見かけませんか? あえて言えば、あれがジェノベーゼに近いものです。

諸説あるようですが、中世(?)の頃、ナポリにジェノヴァから腕利きの料理人がやってきた。その料理人の作る牛肉を煮込んだソースがべらぼうにうまかった。そのソースがジェノベーゼソースと呼ばれるようになった。そして、そのジェノベーゼソースを使ったパスタをジェノベーゼと呼ぶようになった、と。

ですから、特にナポリでは茶色いジェノベーゼパスタが名物となっています。そこから日本でも「ナポリ風ジェノベーゼ」というメニュー名で茶色のジェノベーゼを出す店もあります。バジルのペストを使ったパスタ=ジェノベーゼと思われている現状において、わかりやすくするためにこう言っているのでしょう。ただ、イタリアではあまりそういう言い方はしないようです。「ジェノベーゼと言えばジェノベーゼ!」がイタリア流w

ちなみに、イタリア人の知人が何人かいるので聞いてみましたが、「ジェノベーゼ」とだけ聞いて思い浮かべるのはジェノベーゼソースのパスタ(茶色)で、バジルのパスタはペストのパスタだ、と言っていました。

※追記:後日、他のイタリア人からこう言われました。「緑をジェノベーゼとは呼ばない! あれはペスト! 茶色いソースのパスタがジェノベーゼだ!」と。かなり強い調子でw ただ、すべてのイタリア人がこう考えているというわけでもないでしょうし、実際、「緑のペストのパスタをジェノベーゼとも言う」と言うイタリア人もいたので、「緑のパスタをジェノベーゼと呼ぶのは完全に間違い!」とまでは言いませんw

誤解のポイント

  • 日本ではペスト(という名称)に馴染みがない
  • 「ペスト・ジェノベーゼ」の「ペスト(pesto)」(=バジリコの調味料)が「ペースト(paste)」(=練り物)と混同された
  • 「ペスト・ジェノベーゼのパスタ」では長すぎる

これらが相まって、「ジェノベーゼペーストを使ったパスタだからジェノベーゼでいいだろう」と誤解し、ペスト・ジェノベーゼを使ったパスタをジェノベーゼと呼ぶようになったのではないでしょうか。あくまでも想像ですが。

ですから、

  • ジェノヴァ産バジリコを使ってないのであれば、あの緑のパスタは「ペスト・パスタ」と呼ぶのが正解
  • 仮にジェノヴァ産バジリコを使っているなら(市販の瓶詰めのペスト・ジェノベーゼを使っていたり)、「ペスト・ジェノベーゼ(の)パスタ」が本来は正解
  • あるいは「バジリコペーストのパスタ」と謳うのであれば、それも正しい

です。「ジェノベーゼパスタ」と謳うだけでは、バジリコのペストを使っているという意味合いが含まれていないので。

「pesto pasta」でgoogle画像検索した結果です。見事、すべて緑w

バジルのパスタはキャッチーです。特徴的です。でも、茶色のジェノベーゼは地味と言いますか普通。シンプルです。そして、上のように「牛肉ワイン煮込み~」と言ったほうが、なんだか上等に聞こえます。そんなこともあって、本来のジェノベーゼはその名を失い、バジルに取って代わられた、ということもあるような。

なお、日本語版wikipediaには「ペスト・ジェノヴェーゼ」という項目しかありません。英語版wikipediaには正確なジェノベーゼについての解説があると同時に、「ペスト・ジェノベーゼと混同しないように」とも書かれています。

ペスト・ジェノヴェーゼ
Genovese sauce

※2017年6月15日追記:少しわかりづらい文章構成だったのと、私自身も誤解をしていた部分があったので、加筆修正しました。追記以上

本当のジェノベーゼを作ってみた

では、本来の、イタリア人が言うところのジェノベーゼ(パスタ)を作ってみます。イタリア人の料理ブログ等を参考に作りました。

材料

genovese_01

  • 牛肉 1kg
  • 玉ねぎ 6個
  • ニンジン 1本
  • セロリ 1本
  • トマト 1個(なくてもOK)
  • 白ワイン 1カップ
  • こしょう
  • ナツメグ(あれば)
  • パセリ
  • パルメジャーノ
  • 大ぶりのパスタ(写真はリガトーニ)

作り方

(1)玉ねぎ、セロリをスライス。ニンジンを小さくさいの目切りに。

(2)圧力鍋(なければ普通の鍋)にオリーブオイルを入れ、(1)を炒める。玉ねぎが全体的にしなってくるまで。

(3)適当な大きさにカットした牛肉を鍋に入れる。

(4)白ワインと水を少々入れ、ひと煮立ちしたらアクを取り除く。赤ワインではありません。白ワインです。ここ重要。

genovese_02

(5)適当な大きさにカットしたトマトを鍋に入れる。

(6)40分~60分、圧力鍋で煮る(普通の鍋なら2、3時間?)。

genovese_03

この圧力鍋はパール金属の圧力鍋(4.5L)。安いし便利ですし、料理の幅が広がりますよ~。サイズは3.5リットルよりも4.5リットルがおすすめです。

(7)牛肉がほぐれるほど柔らかくなったら、ギュッと煮詰め、塩、コショウで味を整える。もし、もっとコクがほしいならコンソメなどを加えてみてもいいでしょう。

これで本当のジェノベーゼソースが完成。

genovese_05

(8)茹でたパスタにジェノベーゼソースをからめ、パセリをちらし、パルメジャーノをふりかければ、本当のジェノベーゼパスタの完成。牛肉と野菜の甘みたっぷりの濃厚なソースは激うまです。

今回、牛肉はモモを使いました。脂分の少ない赤身がいいと思います。ナツメグがあれば、圧力をかける前に適量入れます。トマトを入れるレシピと入れないレシピがあるようなので、トマトは必須ではありません。ただし、入れるにせよ少量で。トマトが多いとイタリア人に怒られますw 「それはもはや違うパスタだ」と。

圧力鍋の大きさに限界があったので玉ねぎは6個だけでしたが、本当はもっと入れたいところ。圧力鍋で玉ねぎを煮込むとトロトロになりすぎるので、6個は圧力鍋で煮て、3個ほどは飴色に炒め、あとで加えてもいいかもしれません。

余談ですが、できあがったこの写真をイタリア人に見せました。すると、こんな返答が。

「うん、これがジェノベーゼパスタだよ」

よかった。イタリア人お墨付きw

こうなってしまった以上、もはや声高に「そもそもジェノベーゼとは本来…」と主張しても無駄ですし、そんなことをするつもりもありませんw ただ、本来のジェノベーゼはこうで、こいつがめっちゃうまいからやってみ?とw

PASTA ―基本と応用、一生ものシェフレシピ100 大型本 – 真中陽宙(まなかあきお著)

member_goto02.jpg

後藤ひろし(ひろぽん)

雑誌・書籍編集兼ライター、ウェブディレクター。主に学芸大学駅(学大)界隈で飲んでます。学芸大学で巡ったお店の数は約350軒。

https://twitter.com/gokky_510

こちらの記事もあわせてどうぞ