「やきとり ふじ」(西小山・武蔵小山)は最高!お父さんもお母さんも、ダミ声のお兄さんも、焼きとんもちくわ天も、すべてがハッピーな気分にさせてくれました

追記&追悼:2015年12月13日深夜、「やきとり ふじ」で火事がありました。二階の住宅部分が出火元との情報もあります。そして、お父さんが亡くなったとの報道……。串を焼く姿は凛としてかっこよかったです。やきとんはどれもおいしかったです。串を出す際、丁寧に説明してくれました。ライターをくれました。お父さんの優しさ、ずっと忘れません。ありがとうございました。追記以上。

最近ハマっている西小山散策。プラプラしていたら……。

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なんですかこれ。私にどうしろと? 青と白の鮮やかなコントラスト、赤提灯、KIRINの看板、すだれ、高く伸びたダクト、3ケタの市内局番。もうね、店ごと食べちゃいたい。タレを用意してくれたら、この建物食べられると思うな。

すみません、興奮してわけのわからないことを。翌日の夜、改めて行きました。

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西小山駅から徒歩5分、武蔵小山駅からだと徒歩10分強くらいでしょうか。車の往来が激しい通り沿いにひっそりと佇む「やきとり ふじ」。扉を開けるとそこはやはり楽園でした。

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手前にカウンター、奥にはテーブル席。細長い店内には先客のご常連が一人。お歳を召してらっしゃいますが快活なお父さんと優しそうなお母さんの二人で営まれています。

「いらっしゃいませ」

「レモンサワーをお願いします」

「レモンサワーひとつー」

「レモンサワーねー」

カウンターのすぐ向こうにお二人が並んで立ってらっしゃいます。なのに復唱w かわいすぎるw 突然の新規客に少々警戒心を抱いてらっしゃるかな? こういう時は積極的に話しかけるのが吉。

「連休中もずっとやってらっしゃったんですか?」

「うちは木曜日が定休日だから、明日はお休み。だけど、それ以外は連休中もずっと。休むのはお盆と正月くらい」

とお母さん。

「やきとりお願いしていいですか?」

「どうぞ」

「レバーとシロとカシラをお願いします」

「塩? タレ?」

「タレで」

「2本ずつだけどいい?」

「ええ、お願いします」

「レバー、シロ、カシラ、タレでー」

お母さんがそう言うと、お父さんは冷蔵庫からネタを出し始めます。ほう、ここから串打ちか。

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白衣がビシっと決まってます。凛とした焼き姿。かっこいいなぁ。焼き台の串が乗る部分には塩を盛っています。いい景色。

お父さんは時折、焼き場からこちらをうかがいます。ま、そりゃそうだわね。店内を隅々まで観察しようとしている怪しい新規。なんだろうって思うよなぁ。写真撮りまくってるし。すみませんw お父さんにも話しかけます。

「こちらは何年くらいですか?」

「あー。ここでは47年かなぁ」

「長いですねぇ。この辺りも古いお店がどんどん減って来てるようで、寂しいですね」

「へぇ」

といったやり取りをしていたら、テーブル席から威勢のいいダミ声が。

「ヤクルト勝ったんだろ? これで2ゲーム差か?」

のちほどわかったのですが、私より4つ年上のお兄さん。ちょっと玉袋筋太郎さんに似ています。ダミ声もそんな感じw

「ほら、○○さんいるでしょう」

「うん」

「あの人がチケットくれて」

「へー。行ったの?」

「私はお店があるから行けないじゃない? だから……」

いい調子で玉さんとお母さんがやり取りしています。こういう会話が最上のBGM。

さて、焼とんが徐々に焼き上がって来ます。

「はい、こちらがレバーです」

お父さんが丁寧に説明してくれます。

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芯までアツアツですが、火が通り過ぎているわけじゃない。いい焼き具合。しかもうまい! プリプリなレバーです。へー、ちょっと舐めてた。すみません。こりゃいいや。

「はい、こちらがカシラです」

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赤身と脂身が交互に刺さっています。赤身は柔らかく、脂身はジューシー。脂にありがちな豚独特の臭みはまったくありません。うまーい。

「はい、こちらがシロです」

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プルンプルン。シロ大好き。タレもうまいなぁ。甘みと醤油の具合がちょうどいい。いや、ほんとうまい。

食べ終わったら、串を小瓶に入れて行きます。あっという間に6本を平らげました。さて、次はっと。

「ガツ刺しお願いします」

「あ、ごめんなさい。ガツ刺しないのよ。連休中で屠殺場がお休みでしょう」

「ああ、そうですよね。すみません。じゃあ……ちくわ天お願いします」

「はーい。ちくわ天ー」

「ちくわ天ねー」

注文した瞬間に「しまった!」。ボーンヘッド。お母さんはボールに粉と水を入れて溶いてます。そうか、そこからなのか。手間のかからないものにすればよかった……。

丁寧に揚げられたちくわ天がこちら。

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ちくわの中にはシソが入っています。アツアツ、サクサク。うますぎます。ほんとにうまい。キレイに折られた敷紙もいい! で? これが300円? 串は全部100円? ほんまかいな。やばっ。

ダミ声でテレビに突っ込みを入れている玉さん。サンダルを脱ぎ、椅子の上であぐらを組んでいます。なーんかいい感じ。こういう風にリラックスできるお店があるのっていいですよねぇ。

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ふう、そろそろ一服。タバコでも吸おうか……おや? ライターない。忘れた。

「すみません、もし忘れ物とかのライターがあったら貸して頂けませんか?」

「あー、これどうぞー」

お父さんがすぐ横にあったライターを渡してくれました。そうしたら、テーブル席からダミ声が飛んできました。

「お兄さん、珍しいタバコ吸ってるねぇ。それecho(エコー)?」

ふふ。きたきた。しかもこのやり取りは居酒屋で幾度となく繰り返してきたネタ。話のきっかけになるから、エコーいいw

「エコーです。安いから」

「いくら?」

「250円です」

「安いねぇ」

「ちょっと短いんですけどね」

「タールいくつ?」

「15mgです」

「すごいな。俺のは……10mgだ」

「そんな珍しいですか?」

「だって、あまり売ってないでしょ」

「いや、そうでもないんですよ。自販機でもコンビニでも普通に売ってるんですよ」

「そうなんだ。お兄さんはこの辺りの方?」

「いえ、学芸大学のほうです」

「へー、そんなところからわざわざこんなとこに?」

「西小山にはいいお店がいっぱいあるから、最近よく来るんですよ」

その後もいろいろ話し、ひと区切りついたところで、おいとますることに。

「ライターありがとうございました」

「いいよぉ。ないんでしょ。持って行って」

「ありがとうございます。じゃあ、お勘定を」

お勘定が終わり席を立つと、玉さんのダミ声。

「また来てやってね」

「はい、またぜひ。お先に失礼します」

「またね」

「ごちそうさまでした」

「ありがとうございましたー」

「ありがとうございましたー」

お父さんとお母さんは復唱するかのごとく挨拶してくれました。

店を出ます。ちょうど若い女性が店の前を通り過ぎました。怪訝な顔でこちらをチラッ。おおっと。いけねぇ。

優しくてかわいいお父さんとお母さん。楽しいダミ声のお兄さん。あまりにもハッピーな時間だったので、顔がデローンとしていたのです。

フッと呼吸して顔を引き締めます。だけど、しばらくするとまたデローンとなっているのに気付きます。もういいよ。諦める。だって、超楽しかったんだもん。超おいしかったんだもん。

さて。屠殺は火曜日だよなぁ。そして木曜日は定休日。じゃ、水曜日くらいにガツ刺しを頂きに行こうかな。

やきとり ふじ
東京都目黒区目黒本町5-9-16
03-3793-8977

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後藤ひろし(ひろぽん)

雑誌・書籍編集兼ライター、ウェブディレクター。主に学芸大学駅(学大)界隈で飲んでます。学芸大学で巡ったお店の数は約350軒。

https://twitter.com/gokky_510

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