MEAT JOURNEY 2018

駒沢大学の居酒屋「京鴨(きょうがも)」で食べた椎茸肉詰めは、常連がいかにあるべきかを教えてくれました

「行きたい店リスト」なるものを作ってます。ズラリと並んだ飲食店名。行ったらバツをつけていくわけですが、バツがつくよりも追加される店の方が多く、リストはどんどん膨れ上がっていきます。嗚呼、果てなき酒・食の道――。

その日もリストにひとつ加わりました。所用で駒沢大学駅方面に行ったら……。

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また一軒増えました。そしてその夜、一軒減らしに出向きます。

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駒沢大学駅前の交差点を南に下る道は東京都道426号上馬奥沢線。通称、自由通り。その名の通り、自由が丘・奥沢へと続きます。同交差点から北へ向かう道には特段、名前はなさそうです。ずっと進むと世田谷通りの若林交差点と松陰神社入口交差点の中間あたりに出ます。その通り沿いにある居酒屋が「京鴨」。普通は連濁で「きょうがも」と読むはずですが、もしかしたら「きょうかも」と呼ばせるかもしれません。この話はまた追って。

カウンターが6~8席、4人掛けテーブルがひとつ。小ざっぱりとした店内です。勝手に年配ご夫婦がやってらっしゃるのかと想像していたのですが、違いました。40代半ばから後半と思しき渋めのイケメン店主。のちに聞いてわかったのですが、創業19年目だとか。

瓶ビールを飲みながら、ゆっくりと店内を観察。自宅と思しき2階へとのぼる階段にはたくさんの釣り竿&リールのセットがあります。釣りがご趣味なのでしょう。タイミングよく(?)店主がこう言います。

「今日の魚は、イトヨリ、〆サバ、カワハギです」

いつもなら迷わず〆サバをチョイスします。一番好きな魚が鯖ですから。けど、数日前、学芸大学のバー「Premier1(プレミアワン)」の白井ちゃんに「味心で野中さんが釣って来たカワハギを食べたんですが、超うまかったです」と自慢げに話されプンプンだったので(どちらかというと、連絡をくれなかった野中さんにねっ!www)、「じゃ、カワハギをお願いします」となりましたw

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プリっとした白身。トロっとした肝。

「おととい釣れたカワハギです」

とてもおいしいです。こうなるなら日本酒にしときゃよかった。ビールをチェイサーに日本酒は危険だしなぁ。なんてことを考えていたら、先にいらっしゃっていた常連さんが話しかけてきました。

「月見ました?」

「ああ、そういえば今日は中秋ですね」

帰って調べて、間違えていたことに気付くわけですが。中秋は9月27日(日)。満月がその日、9月28日(月)。この常連さんは満月を指してそう言ったのか。ははは、恥ずかしw

「ここに来るまで空見たんですけど、見えなくて」

「天気ですか?」

「いえ、建物が邪魔して」

「なるほどー。帰りに見てみます(笑)」

明るくて気さくな常連さん。私の4つ上。その後も、とにかくいろいろ話しかけてきてくれました。おかげで一見としての寂しさもありませんでしたし、店主ともスッとなじめます。

「ほら、あれだれだっけ? 居酒屋をいろいろ……」

「吉田類さんですか?」

「そうそう。類さんもここ来たんですよ」

「プライベートでですか? 撮影で?」

「撮影だよね、ケンさん」

店主のケンさんが話を継ぎます。

「あの番組の10周年記念企画でいらっしゃったんです。最初は断ってたんですよ。だけど、プロデューサーの方が3回も来てくれて。そんなことを吉田類さんファンの常連さんに話したら、『なんで断るんだ!』って怒られちゃって(笑) だから取材を受けたんです」

家に帰って、「酒場放浪記」のその回を見ました。ふふ、知ってる店、知ってる人を見るってのも面白いな。ちなみに、ナレーションでは店名を「きょうかも」と言っていました。なもんで、もしかしたら「きょうがも」ではなく「きょうかも」かも?という。

参考サイト/BS-TBS:吉田類の酒場放浪記 #572 吉田類の今日は歌手デビュー

さて、その後もずっと、常連さん、店主・ケンさんと三人で談笑。三浦で釣りをやったり、野菜を育てていたりする話、常連さんたちと温泉やバーベキューに行った話、ジェットスキーの話。あと、飲食店をやってらっしゃる方々との交友関係も広いようで、学芸大学のリ・カーリカの店主、堤亮輔氏とも飲み友達なんだとか。

話の合間に串焼きをお願いしました。

「正肉とつくねと椎茸肉詰めをお願いします」

「椎茸肉詰め乗った!」

と常連さん。人が頼んだものって食べたくなりますよねw

ケンさんはそれはそれは細かく玉ねぎをみじん切りにし始めました。そしてひき肉と練り混ぜ、大ぶりの椎茸に詰めていきます。椎茸の背には格子状に隠し包丁。へー。

それなりに時間をかけて仕込み焼き上げた串がこちら。

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正肉はさっぱり。濃厚なタレで酒が進むつくね。どちらもおいしいのですが、絶品なのが椎茸肉詰め。噛むとジュワーッと汁が溢れ出ます。あれほど細かく玉ねぎを刻んでいますから、玉ねぎの食感はほとんどありません。けど、玉ねぎの甘みがありますし、玉ねぎの水分によってジューシーにもなっています。なーるほど。そういうことか。こりゃまた勉強……。

ん? あれ? 常連さんの先ほどの「乗った!」。もしかして……。

串は注文が入ってから仕込みます。特に椎茸肉詰めは、玉ねぎを細かくするなど手間暇がかかります。ひと串だけでは大変だし効率が悪い。だったら俺も一本頼んでおこう。一本だけ作るより二本作った方が、いろいろな意味でケンさんも助かるだろう。というような算段が、この常連さんにあった? もしかしたら、そういう気遣いで注文を入れた? 私が二本頼んでたらまた違っていたかも?

そんな私の詮索を遮るかのように、常連さんが声をかけます。

「後藤さん、いい人ですね。また話したいな。近いうちにここでぜひ」

そう言って常連さんはお帰りになりました。

最後までずっと一見に話しかけ楽しませてくれました。必ず名前でお呼びになります。椎茸肉詰めの注文は、もしかしたらこちらの至らなさをカバーするためのものだったかもしれません。

この方がいらっしゃらなくても「京鴨」はいい店だったはず。だけど、この方によって私の眼には「京鴨」がさらにいい店に映りました。一見を楽しませ、行きつけの店をより魅力的に見せる――常連はかくあるべし、という教科書だ。

でも、これは逆のことも言えます。いい常連さんが集うということは、それだけいい店だから。いい店はいい客を惹きつけ、いい客はいい店を作るのです。学芸大学界隈だったら、「美好」「信八」で同じようなことを感じるなぁ。

とても楽しかったので、相当に長居してしまいました。

「ごちそうさまでした」

「ありがとうございます」

イケメン店主の店をあとにし、自由通り方面へと向かいます。ふう、いい風。いい気持ち。空を見上げると、とてもきれいな満月が出ていました。

近いうちにまた行かなきゃな。

京鴨(きょうがも)
東京都世田谷区上馬4-17-11
03-3487-6316
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