西小山の「豚゛太郎(どんたろう)」はもつ焼きもナス味噌も手打ちそばも信じがたいほどうまかった。グラタンは食べてないけど完全にやばいヤツです

西小山駅からだと「やきとん道場 三鶴」「市太郎」のある筋から果物屋「たなか」のある五叉路へ向かい、そのまま道なりに北西へずっと真っ直ぐ。学芸大学駅方面から行くのなら、円融寺通りを南下して、立会川緑道を越えた先、ひとつ目の信号を右折。住宅街に忽然と現れるのが、やきとり「豚゛太郎(どんたろう)」です。

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「いらしゃいませー」

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扉を開けると、カウンター内にお父さんとお母さん、テーブル席には女性が小さな女の子を抱えていました。完全にご家族ですなw カウンターが8席ほど、4人掛けのテーブル席が3つ。こういう店にしては広いです。そしてキレイ。ネタケースにはいろいろなネタが並んでいます。これは期待できます。ネタケースにネタが豊富=回転する=客が多い=いい店、だからです。

カウンターに座り、ホッピーをお願いしました。

「氷どうします?」

ほえぇ。ちゃんと聞いてくれるんだ。

「氷もお願いします」

私は三冷主義者ではありませんが、三冷主義者には嬉しいですね。こういうのって。

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気になるメニューがいっぱい。どれもうまいんだろうなぁ。その中でも特に目を引くのがグラタンと手打ちそば。これはあとで絶対頼もう。まずはガツ酢を頂きました。

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ピンと剣立った色鮮やかなキュウリとコリコリのガツ。味付けはポンズとわずかにドープ。キュウリとガツの組み合わせは最高。いくらでも食える。とてもおいしいです。

次は串いきますか。

「カシラ、レバー、ツクネ、塩でお願いします」

ネタケースの中を見りゃうまいことはわかります。ここはタレではなく塩でしょう。と、ここで隣の常連さんが「グラタン」と言いました。あー、まじですか。先越された。しゃーない。出てきたグラタン見て、「うわぁ、おいしそうですねぇ。じゃあ、僕も」作戦で行こう。

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やって来たもつ焼きです。おそらくですが、レバーはなんらかの下処理をしていそうな気もします。もうちょっとしっかり観察しておけばよかったな。カシラは丁寧に開いています。とても柔らかい。そしてつくね! コリコリの軟骨が混ざったお手製のつくね。やばいです。超絶うまいです。

後ろを振り返るとこんな絵が。

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豚が豚食っとるw シュール。

串を食べている間、お父さんはグラタンを作り始めます。そう、作り始めたんです。いちから。バターで玉ねぎ、きのこを炒め、白ワインを入れて、生クリームと牛乳を入れて、粉入れて。できあがったソースを器に移してオーブンへ。

繰り返します。注文が入るたびにいちからひとつずつ作ってるんですよ。しかも、手際がハンパない。チャチャっとソースをこしらえます。やばいでしょう。こういう居酒屋でこんなことしてるところは、まあまずない。

こんな姿を見せられてたんです。モツ焼きへの観察はぬるくもなりますってw

きのこグラタンがお隣さんに出されました。ハフッとしながらスプーンでグラタンを食べてらっしゃいます。まじやばい。じゃ、私も頼んでみますかね。

と、ここで、扉がガラッと開きました。常連さんのようです。しかし! 扉が開いた瞬間です。

「いらっしゃい」

「グラタン」

えええええ! こんばんはも言わず、扉開けた瞬間に「グラタン」てwww 機先を逃して、さらにこんな注文されては、もう頼めない。負けました。今日はグラタンは諦めよう。今度にしよう。

やって来た常連さんはテーブル席へ。椅子に座りながらこうおっしゃいます。

「いよっしょっと。ここのグラタンはうめえからなぁ。ビール」

こういう頼み方ができるってのはかっこいい。なぜなら、通い詰めてなきゃできない注文の仕方だから。いいなぁ。すてき。

それにしてもです。最初から気になってたんですよ。常連がこぞって頼むんですよ。そんなグラタンを今日はあえて頼まないんですよ。泣けてくる……w

仕方なくってわけでもないんですが、なす味噌炒めを注文しました。

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見て、この照り! そして、皿からちょいとはみ出したナスの形! そりゃうまいって。うまいに決まってるよ。ナスは皮をちょっとむいてるんです。火が早く通る。だから、フニャっとしてない。シャキっとしてる。だけどしっかり油も回って味もしみてる。ピーマンもシャクッ。味付けは濃厚。一気に食いました。ナスを噛むとキュっと鳴る。やばすぎでしょう。天才。

待てよ。この感じ……。まさか、油通しでもしてたか!? うーん、グラタンが気になり過ぎて注意力散漫w

〆は当然、手打ちそばです。

「そば打ってるんですか?」

「ええ」

「大変じゃないですか? 僕も二度ほど自分で打ったことあるんですけど、まあ難しい。うまくできませんでした」

「慣れだけどね。難しいのは水をこう……」

「水まわし?」

「そう、水まわしが難しいよね」

「水まわしもですが、延ばすのだって難しかったですよ」

「自己流だから。適当だよ」

「いえいえ。じゃあ、手打ちそばください」

「はい」

ほどなくして手打ちそばが出てきました。

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言葉が出ません。

太さはまちまちです。角が立ってます。黒い粒が見えます。この色合いからすると、そば粉の割合が多いというだけではなく、相当いい粉を使っているのでしょう。完全にやばいやつです。見ただけでわかります。

何もつけずにひと口。あああ。もうだめ。そばの香りがしっかりします。プチっという歯ごたえは手打ちのそれ。不揃いな太さはむしろ食感にバリエーションを出します。喉越しもいい。そんじょそこらのそば屋のそばより断然うまい。

半分ほど食べ終えた時、そば湯が出されました。ばーかばーか。どうして? どうしてそんな完璧なタイミングなの? そば湯を入れてる湯桶もオシャレ。おかしいって。ここ、もつ焼き屋だよ?

2/3ほどはそのままで食べ、残りはツユにつけます。このツユもなぁ。なんなんだよ。ほんとに。最高じゃん。

そばを食べ終え、薬味をペロリといって、そば湯を注ぎます。呆れました。これ、打ち粉だけじゃないじゃん。そば粉溶いてるじゃん。トロみのあるそば湯。高級手打ちそば店とやってること同じじゃん。だめだよ、ここまでしちゃあ……。

「まっじでうまいですね」

「ほんと? ありがとう」

「あのー、どうして”とんたろう”じゃなくて”どんたろう”なんですか?」

「もう随分前のことだからねぇ。忘れた」

ま、なんか理由はあるんでしょうけど、今さら語るのも億劫、そんな感じw 深く追うのはやめておきましょう。

「こちらはどれくらいになるんですか?」

「昭和42年から」

「僕の歳より上だw けどその割にはきれいですね」

「一度、改装したから。10年くらい前かな。この辺も古い店はほとんどなくなって」

「そうですよねぇ(いや、そんな時代のことは知らないんですが)」

お母さんはお孫さんと常連さんの相手をしてらっしゃいます。常連さんはお孫さんを名前で呼んでらっしゃいます。私の足元には……。

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かわいいねw こういうのが気になる方は行けないでしょうが。

手際よくモツを焼き、フライパンを振るお父さん。それをサポートするお母さん。いい風情のご常連。超絶うまいメシ。「豚゛太郎(どんたろう)」の素晴らしさを適切に表現する言葉を私はまだ知りません。

豚゛太郎(どんたろう)
東京都目黒区原町2-2-19
03-3711-1642
食べログ

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執筆者:後藤 ひろし(ひろぽん)
雑誌・書籍編集兼ライター、ウェブディレクター。主に学芸大学駅(学大)界隈で飲んでます。
https://twitter.com/gokky_510

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