学芸大学の天ぷら屋「カブ」の天ぷら定食はおいしくて、昭和モダンを思わせるしつらえが自分好みすぎて、萌えて悶えた

前を通りかかって気になっていた、というパターン。飲み屋などで店主や店のスタッフに会った、というパターン。私が飲食店に行くきっかけは主にこのふたつ。天ぷら屋「カブ」に行ったのは両者が組み合わさってのことでした。

kabu_02

学芸大学駅東口商店街を抜け、目黒通りに差し掛かろうかというところにある「カブ」。もちろんその存在は知っていました。一度行ってみたいなと思っていたら、最近、飲み屋で店主・平田君とよく顔を合わせていたので、機会を見つけて行ってみました。

kabu_03

田舎のバス停脇にでもありそうな「昼の部」という黒い看板ももちろんいい。けど、それ以上に右側の「営業中」のフォント。絶妙。いい書体だなぁ。この先の緩やかにカーブを描く縞鋼板の階段を無事に上り下りできるかどうか、不安になります。それほど、もうすでにクラクラきています。

kabu_04

カンカンカン。階段を上がると暖簾に「創業昭和八十七年」「四季酒肴求心」。そして”「笑”を逆さに書いています。昭和87年てことは平成24年。2012年にオープンしたということか。「四季酒肴求心(しきしゅこうぐしん)」は自由が丘の名店「金田」の標語として有名です。箸がつまんでいる赤いものはなんだろう。漢字の「心」かな? そして”「笑”とは? 倒福的なことなのか、あるいは笑うに角がついているから笑う門には福来たる的な? 仕掛けがいろいろあって忙しいw

kabu_010
kabu_11

店内はカウンター8席。旬のてんぷら定食をお願いしました。

タイルがいい。石油ストーブも素敵。ぶら下がっているランプシェードも、ライトの赤いコードも魅惑的。ちんちんを出している仙台四郎の人形もかわいい。そして、天井を見上げると……。

kabu_05

アールデコのような欄間風。すべてをチェックしきれていないのですが、おそらく3つあって、松竹梅かな。いいなぁ、この感じ。悶々としてきます。

おっとっと。店内の様子にばかり目を奪われていてはいけません。チリチリと油が優しく鳴り始めました。すべてのネタがタイミングよくすくい上げられるよう、順序よくネタを揚げて行きます。

揚げる音が静まってきたら、揚がったという合図。しじみの赤だし、お新香、ご飯が供されて、最後に天ぷらがやって来ました。

kabu_06

季節を感じさせる栗と銀杏。舞茸、玉ねぎ、茄子、キス、海老が2本。ほんの少し塩につけます。薄めの衣がサクっと音をたてたかと思うと、中の身がフワッ、プリッ、ムチッ。すかさず白米を口へ放り込み、ハフッ。

サクッフワッハフッ、サクップリッハフッ。規則正しい三拍子。時折、お新香や赤だしがこれを崩しにかかります。そして、ある意味で天ぷらのクライマックスと言えばこれ。海老のしっぽ。

kabu_07

プリッとした海老の身からの突然の変化。そして、天ぷらの衣とは異なる香ばしさ、食感。パリッパリッ。愉悦。

kabu_09

すべてを食べ終え、もう一度、店内を見回します。単なる和テイストじゃない。昭和モダン。

kabu_01

薩摩ボタン(レプリカ)のリング、縁台、提灯、藍色のカーテンに朱色のステッチ、OKURAあるいはBLUEBLUE。恥ずかしながら拙宅です。本当にこういうテイストが大好きなんですよ。落ちつくなぁ。

「なんで『カブ』なんですか?」

「いろいろ意味があって、こちらに……」

メニューの裏に書いてありました。

kabu_08

(1)熊などの獣の子どもを意味する英語。若く未熟な人、小僧、青二才、生意気な若造。
(2)ホンダの生産する原付バイク。
(3)魔法使いサリーちゃんの弟。
(4)その仲間・社会で評価を得ていること。また、その評価。

カブはサリーちゃんの弟ではなく家来なんですが、それはさて置き。

飲み屋で見せる顔とはまったく違う、店でのそっけない感じは、職人意識というのもあるのでしょうけど、シャイだから? 店名にしたって、1~4以外になーんか、他にあるんだろうな。と思わせます。ふふふw

銀座の老舗で技を磨いたという店主は白髪。だけど、先日聞いたら、私より年下でした。夜は居酒屋としても利用できる「カブ」の挑戦を、行く末を、これからも見守っていきたいと思います。

昼に天丼も食べたいし、夜も飲みに行ってみよ。

※2015年12月5日追記

この記事を上げたまさにその日の夜、某バーで「カブ」の内装デザインをされた方に偶然お会いしました。びっくり。

私よりひと回り上なのに、まったくそうは見えない若々しい方。とても素敵なデザインですとお伝えすると、喜びつつこんなことを。

「昭和の生まれでしょう。そういう時代のものが懐かしくて。『カブ』は昭和の水族館、銭湯をイメージしてるんです。だからタイルを使ったりね」

上述の「松竹梅」はあっていました。本当はもっといろいろお聞きしたかったのですが、楽しい酒の席で仕事に関する話ってのもアレですから、ほどほどに。

それにしても、すごい偶然だったなぁ。いやはやびっくり。

夜の天ぷらコースをしっかり頂いてきました

夜はこんな感じ。

kabu_17
kabu_12
kabu_13
kabu_15
kabu_16
kabu_14

ピーマンの昆布和え、えび、キス、アユ、鯛のしそ巻き、天丼。ある夜に食べた天ぷらの一部。うまー。

kabu_18

たまたまその日はとてつもない賑わいでした。ほとんどが店主・平田君と同郷・大分県の人たち。

ご覧の通り、かしこまるようなお店ではありません。もちろん天ぷらはバツグンですが、カジュアルに利用できます。平田君、亮平、チカちゃん、スタッフはみんな楽しいヤツらです。ついでに男前ばっかw わいわいと賑やかに天ぷらをつまみながら盛りあがって下さい。

(2016年8月23日追記)

カブ
東京都目黒区中央町1-10-12 2F
03-3794-9881
食べログ

member_goto02.jpg

後藤ひろし(ひろぽん)

雑誌・書籍編集兼ライター、ウェブディレクター。主に学芸大学駅(学大)界隈で飲んでます。学芸大学で巡ったお店の数は約350軒。

https://twitter.com/gokky_510

こちらの記事もあわせてどうぞ