「PANTECO(パンテコ)」(駒沢大学・野沢)のパンは変幻自在。主張しない特徴のなさはむしろ武器。料理を引き立たせるパンです~火垂るの墓、サクマ(式)ドロップス、目黒本町、パンテコと繋がる歴史の糸

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「火垂るの墓」というアニメ映画(原作:野坂昭如、監督:高畑勲、制作:スタジオジブリ)はみなさんご存じでしょう。「火垂るの墓」といえばサクマ式ドロップスです。

1908年(明治41年)、佐久間惣次郎商店が創業します。創業間もなく「サクマ式ドロップス」を売り始め、1913年に缶入りでの発売が開始されます。

1920年、佐久間惣次郎商店は佐久間製菓株式会社(旧)となります。同社は太平洋戦争中に廃業するのですが、上述のサクマ式ドロップスはまさに、この佐久間製菓株式会社(旧)の商品です。

終戦後、”佐久間”が2つの会社として復活します。ひとつは1947年創業のサクマ製菓株式会社(恵比寿)。もうひとつは1948年創業の佐久間製菓株式会社(新/池袋)。両者は現在も存在し、裁判やらなんやらあって、サクマ製菓株式会社は「サクマドロップス」(緑)、佐久間製菓株式会社は「サクマ式ドロップス」(赤)を販売しています。

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※現在、「サクマ式」の商標は佐久間製菓株式会社(新)にあります。ただ、「火垂るの墓」に登場するサクマ式ドロップスは旧・佐久間製菓株式会社の商品です。

ここからはサクマ製菓株式会社に話を絞ります。

同社は1970年にハードキャンディ「いちごみるく」を発売開始。いちごがいっぱい書かれているパッケージでお馴染みのアメです。2008年、同社は本社を移転します。移転先は目黒区中央町。目黒郵便局の前の目黒通りを渡った先、和食屋「トクスエ」、山佐時計計器(YAMASA)、フォルクスワーゲン目黒の裏手です。

“あの”サクマドロップスを作っている会社が学芸大学界隈にあったんですねー。知らなかった。

さて、話を少しさかのぼります。

1985年、サクマ製菓株式会社は恵比寿の工場内にパン窯を作り、パンの製造・卸を始めました。ホテルやレストラン向けにパンを作っていたのです。その後、パンの配達を始め、店頭では小売もし始めたのですが、1994年、パン部門は株式会社パンテコに譲渡されます。

2009年、パンテコは恵比寿から世田谷区野沢に移転しました。環七沿いで上馬交差点から徒歩2分ほど。「まるきんラーメン 上馬店」のすぐ隣です。

長い歴史をたぐり寄せ、ようやく本題へとたどり着きましたw

主張しない、特徴がないは「PANTECO(パンテコ)」にとって褒め言葉

タイカレーを大量に作ってしまい、二日目、普通にご飯で食べるのは飽きたからパンに浸して食べてみようとなりました。パンをどこへ買いに行ったかといいますと、「PANTECO(パンテコ)」です。

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最寄駅は駒沢大学駅で、徒歩10分ほど。学芸大学視点でいえば、野沢もしくは下馬の北の方にお住まいであれば徒歩圏内です。

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「パンテコ」の代表取締役でもありシェフでもある松岡徹氏は、日本にフランスパンを普及させたフィリップ・ビゴ氏のお弟子さんです。先述の通り、「PANTECO(パンテコ)」はホテルやレストランにパンを卸すのがメイン。奥は小さな工場になっているのですが、店頭でもパンを小売しています。

何度か購入したことがあるのですが、その日はバゲット(2/3)とカレーパンを買いました。

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あ。

タイカレーに合わせようとしてるのにカレーパンを買うオレばかかよw

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カレーパンはふかっ。かふっ。全体的に言えることですが、「パンテコ」のパンは軽いです。カレーはオーソドックス。特段コメントするようなこともない、ごくごく普通のカレーパンです。

と書くと、ディスっているように感じるかもしれませんが、そうではありません。だって、公式サイトにもそう書いてあるんだもん。

パンテコのコンセプト

パンテコのパンは、お口直しのような感覚で食べて頂けるように、「美味しすぎる、塩が効いている、甘みが強い」など、存在感を主張し過ぎません。シンプルでかつ食卓に並べられた料理の引き立て役を目指しています。

「パンテコ」のパンは多くの施設に卸されています。どこで使われても大丈夫なように、シンプルにパンを焼き上げています。特徴がないというのはむしろ、「パンテコ」の強み。だからこそ広くいろいろなところで利用してもらえます。そして、それがわかった上で、個人客も「パンテコ」を利用します。

「なんだこれ。普通じゃん」

「ぜんぜん特徴ねぇなぁ」

という文句はお門違い。狙ってそうしているわけですから、逆にそれは「パンテコ」においては褒め言葉ですらあるのです。

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バゲットは焼きました。サクっ。まったくクセのない味わい。タイカレーに浸すとまさにタイカレーパン。なーるほど。シンプルだから変幻自在なんだ。

それから数日後。銀座の「bistrosimba(ビストロシンバ)」へフレンチを食べに行きました。そこのブイヤベースが超絶うまかった。そうしたら、自分でも作りたくなっちゃいます。

「パンテコ」で数種のパンを購入。

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クロワッサンとあとは失念。で、ブイヤベースをチャチャっとこしらえます。

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もちろん「bistrosimba(ビストロシンバ)」の足元にも及ばないでき。けど、めっちゃうまい。ブイヤベースをたっぷり吸った「パンテコ」のパンも激うま。最高。

個性があればいいってわけじゃない。刺激が強ければいいわけじゃない。世の中、そんなものばかりだと落ちつきませんわw サクマ(式)ドロップスだって、個性の強い刺激的なアメだったら、節子は舐めていられませんてw

なんてことのない、どこにでもあるような、でも安心して何にでも合わせて食べられる、穏やかで軽やかなパン。味が強めの料理を作る際、「パンテコ」のパンを添えてみて下さい。「パンテコ」のパンは料理を引き立て、そして、料理によってパンがおいしくなります。

パンテコ
東京都世田谷区野沢2-30-3 駒沢イン1F
03-5779-7049
公式サイト

「火垂るの墓」、サクマ(式)ドロップス、目黒本町、野沢のパンテコ。ほどいて見えてくる、歴史が紡いでいた縦糸と横糸。面白いなぁ。え? 別に? そうですか。ははは(^^;

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後藤ひろし(ひろぽん)

雑誌・書籍編集兼ライター、ウェブディレクター。主に学芸大学駅(学大)界隈で飲んでます。学芸大学で巡ったお店の数は約350軒。

https://twitter.com/gokky_510

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